看護師の何気ない一言が患者の人生に大きく影響している。そればかりではない。べテラン看護師の観察力が誤診を見抜くこともある。髄膜炎と申し送りのあった男子大学生が、深夜1時頃にナースステーションを覗き込むように、首をかしげて去っていった。その時、「あれ?髄膜炎?」とMさんの胸に引っかかりがあった。「髄膜炎なら項部(首の後ろ)が硬くなって、首をかしげることはできないはず……」翌朝、Mさんがその大学生の首を触ってみると、硬くない。体に湿疹があり、それはヘルペスだとの説明かあったが、「つつが虫病」ではないかと不審に思った。もし、髄膜炎でなくつつが虫病だったら、まったく治療法が異なる。髄膜炎用の抗生物質を誤って投与してしまえば、逆効果だ。Mさんが、彼に登山経験や虫刺されがないか尋ねてみると、ワンダーフォーゲル部に入っているという。野外活動をする機会が多く、虫刺されの可能性が高まった。よく調べてみると、ヘルペスだと思われていた湿疹は虫刺されだと判明し、感染症を治療する薬の「ミノマイシン」を投与するとすぐに治った。Mさんは「看護師が忙殺されては、患者の体を触ることもなく、こうしたことも見逃してしまう。医師の言うことを鵜呑みにしたり、マニュアルどおりの看護をしては、患者の異変に気づけなくなる」と改めて思ったという。
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